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かこたの雑談その2 〜芦毛の馬は走らない〜

かこたの雑談

——競馬ファンの迷信は真実か データと感情で読み解く芦毛馬の真実

競馬にハマった誰もが、一度は耳にする言葉だ。
現在、絶賛放送中の「ウマ娘 シンデレラグレイ」の5話のワンシーンにも出てきている。

迷信ともいえる短いこの一文は、なぜか長く記憶に残る。そして、やがてその意味を身をもって実感する。

パドックでよく見えた芦毛が直線で失速する。
大外をぶん回した芦毛が馬群に沈む。
人気の芦毛が派手に飛び、馬券を焼き尽くす。

そんな光景が重なるうちに、こう思ってしまうのだ。
「やっぱり芦毛は、来ないんじゃないか」と。

だが果たして、本当にそうなのか。
このコラムでは、「芦毛=走らない」という競馬界に根付いた常識に対して、データと経験、そして競馬という“感情のスポーツ”への敬意を込めて、静かに反論してみたい。

まずはファクトから入ろう。
JRAのレースデータ(2013年〜2022年)を基に、毛色別の成績を簡潔にまとめる。

数字が示す通り、芦毛は他の毛色よりも勝率・複勝率ともにやや劣る傾向にある。
この点だけを見れば「走らない」はあながち間違いではないようにも思える。

だが、注目すべきはその差の小ささだ。

勝率で言えば鹿毛が6.4%、芦毛が5.6%。
その差は0.8ポイント。馬券の世界では誤差の範囲とも言える。
つまり、「統計的に明らかな劣勢」と言い切れるほどの差ではない。

芦毛が「走らない」と言われる背景には、数字だけでなく“印象のバイアス”が存在する。

芦毛は、生まれたときは黒っぽい色をしているが、年齢とともに徐々に白くなっていく
2〜3歳の若駒の頃はくすんだ灰色でパドック映えしづらく、毛ヅヤも目立ちにくい。
調子が良くても“よく見えない”ため、印象が下がりやすい。

また、白い馬体はレース中もよく目立つ。
他馬が地味に沈む中、芦毛が負けると印象に残りやすく、「また芦毛が…」という認識が強化されてしまう。

言い換えれば、芦毛の敗戦は記憶に残りやすく、過大評価されやすいのだ。
視覚と記憶の絡み合いが、芦毛=走らないという“刷り込み”を生む。

芦毛は単なる毛色ではなく、特定の血統を通じて受け継がれる性質がある。

たとえば以下の系統が芦毛に多い。

  • グレイソヴリン系:オグリキャップやメジロマックイーンなど、持続力に優れる系統
  • カロ系(Silver Hawkなど):クロフネやホエールキャプチャなど、パワーと瞬発力を兼ね備える血統

これらの血統は、総じてスピードよりスタミナや持続力、パワー寄りのタイプが多い。
そのため、瞬発力勝負になりがちな芝の短距離戦では分が悪くなることがあり、
逆に、時計のかかる馬場や長めの距離、ダートでは適性を発揮する傾向も見られる。

また、晩成型が多いという指摘もある。
若駒のうちは結果が出づらく、「芦毛=走らない」の印象が形成されやすい。

とはいえ、「だから芦毛はこうだ」と決めつけてしまうのも危うい。

芦毛といっても、早熟型もいれば晩成型もいるし、ダート巧者もいれば芝短距離で切れ味を見せる馬もいる。
アイドルのように人気を集める馬もいれば、玄人好みの渋い実力馬もいる。

つまり、芦毛は色で判断するのではなく、「個」として見るべき存在だ。

血統、年齢、適性、調子、コース形態、馬場状態——
それらを見極めたうえで、芦毛であることをどう解釈するか。
それが、本来あるべき「競馬の読み方」だろう。

芦毛だから買う、でもなく。
芦毛だから切る、でもなく。

芦毛でも、その馬が走ると判断できたなら、迷わず買えばいい。

それでも、芦毛の馬が走るとき、競馬場は少しだけざわつく。

  • オグリキャップのラストラン、有馬記念での感動の勝利
  • クロフネのジャパンカップダート、2着に7馬身差の衝撃
  • ソダシの白毛初のGⅠ制覇という快挙
  • ゴールドシップの破天荒すぎるレースぶりと、それを許してしまう魅力

芦毛が勝つとき、それはただの勝利ではない。
「常識を裏切る瞬間」「偏見が砕かれる瞬間」だからこそ、心を打つ。

“走らないと思われていた馬が走った”その事実が、
競馬というゲームに、他にはないドラマを与えてくれる。

芦毛の馬が抱えるのは、能力不足ではなく“認知の難しさ”だ。

印象に左右されやすく、適性の把握にも注意が必要で、
しかも数が少ないからこそ、誤解も広がりやすい。

でもだからこそ、芦毛の馬を見極められることは、
競馬を深く理解していることの証明でもある。

芦毛を無条件に信じる必要はない。
だが、無条件で切る理由もどこにもない。

“白いから買わない”のではなく、
“白いけれど、これなら勝負できる”と思えたときこそ、
競馬ファンとしての醍醐味があるのだ。

かこたの雑談
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